ひぐらしのく頃に

        『白々し編』
























  ― 告白 ―







帰り道。

一番重傷だった詩音を看病するために沙都子は詩音についていった。

そうすると、梨花ちゃんが独りになってしまうので俺の家に泊めることになった。

「圭一」

梨花ちゃんは突然足を止め、俺を呼んだ。

「悠貴を………悠貴を……私がッ……!!」

梨花ちゃんは震えていた。

無理もない。

梨花ちゃんは、大人びているけど沙都子と年齢は変わらないんだ。

そんな彼女が、仲間だと信じていた悠貴を、殺さなければならなかった。

世界を護る為に。

ずっと、ずっと不安だったろう。

悠貴は本当に敵なのか、と。

……でも俺を護る為に、梨花ちゃんは悠貴を殺した。

そして、悠貴にとどめを刺したのは紛れもなく俺と梨花ちゃんなんだ。

(俺だって………悠貴は仲間なんだと信じてた。
 敵じゃない、四五六さんの言っている事は嘘だと、信じたかった。でも……)

悠貴は現実には敵だった。

俺たちを、梨花ちゃんを殺そうと、仲間の仮面をかぶっていただけ。

悔しい。

俺は信じてたのに。悠貴を。

梨花ちゃんも、信じていたのに。

俺は、梨花ちゃんの眼を見て言う。

「……大丈夫。俺がいる。だから震えないで。恐れないで。一生、時間をともに過ごそう。
 ホントは、鷹野さんの事件が終わった時点で、言おうと思ってた。
 ………俺、梨花ちゃんが……好きだ。愛してる」

梨花ちゃんは一瞬俺の言葉が理解できなかった様で、キョトンとしていた。

だが、みるみるうちに顔が赤く染まっていった。



「奇跡みたいに恋をしよう。永遠に恋をしよう。この先どんな惨劇があろうとも。
 俺達は絶対に乗り越えて幸せになれるんだから。………ダメか?」



そう言って俺は、梨花ちゃんの答えを待つ。

「……こんな…こんな私で良いの……? 私は……悠貴を……」

「そんなの関係ない!! それに、そのことも梨花ちゃんと一緒に背負いたい。
 梨花ちゃん独りに……背負わせたくない。俺だって、同罪なんだから」

「圭……いちぃ……!!」





梨花ちゃんが俺に抱きつき、そして二人の唇が、重なる。





真っ赤な顔をして、二人で手を繋いで歩く。

これから先、俺達はずっとこうして手をつないで一緒に歩く。




「俺は願っている。梨花ちゃんが幸せになることを」


「私は願っている。圭一が幸せになることを」




「「私達の敵であり、仲間でもあった、悠貴の分も」」










































  ― さよなら。 ―







「あぅあぅ………梨花……さようなら」

あの時。圭一と梨花が構えた、『鬼狩柳桜』が悠貴を貫く直前。

僕もそこにいた。

「信じてたのに…信じてたのにッ!!! あなたは、沙都子を救ってくれた…!!
 あなたは、私達を鷹野から救ってくれた…! なのに………それが全部偽りだなんてッ!!!」

『そんな事ないのです!! 悠貴の優しさに、偽りはないのですよ!』

「………っ………悪いか? 俺には、ッッ、俺の理由があるんだ。
 例え…圭一を…古手を…みんなを…裏切ってでも、果たさなきゃ、ならない約束が……あるんだよ。だから、俺はまだ!!」

悠貴が立ち上がろうとする。

『あぅあぅ! 悠貴、駄目なのです!!死んでしまうのですよ!』


[…大丈夫]


「と、止まりなさい!!!」

梨花が剣先を突きつける。

「止まれ!! 悠貴ッ!!!」

圭一がバットの先を突きつける。




「……悪いな。……無理、だ」


[羽入との………約束を果たすまでは………!!]


『悠貴……!! もう良いのです、だからやめて!!』

ボタボタと傷口から血を流し。

口から血を吐き。

「がぁっ………かはっ………」

それでも悠貴は止まらない。

『悠貴っ……!! どうしてそこまで……!!』

「止まってよ悠貴!! ……お願いだから!!!!」

梨花の目から涙が溢れる。

その時だった。

突然圭一がバットを捨て、震える梨花の手に自らの手を添える。

「………!!」

圭一も、一筋の涙を流しながら言う。

「梨花ちゃん………終わらせよう。悠貴を殺さないと明日がないなら、俺達は悠貴を殺して明日を生きる」

『そんな事ないのです!! 悠貴と一緒に明日を迎える事も……!!』

梨花は涙を流しながら、無言で頷いた。

『駄目なのですッ!! やめてぇぇッ!!! 梨花ぁぁぁぁぁぁッ!!!!』







「「あぁぁぁあぁぁああぁああぁぁッッ!!!!」」










………ザクリ











あの時。

梨花に僕の声は届かなかった。





そして今。

梨花はもう、僕を感じられない。





「……ぐすッ。ごめんなさい………悠貴………思い出せなくて。
 でも、僕は……いえ、私は思い出した。……だから今度も、私が……!!!」





私は、崖から落下した悠貴の元へと向かった。















さようなら、梨花。圭一。みんな。










































  ― 死の手前 ―







古手神社の崖の下。





どれくらい、時が過ぎただろうか?

「黒杉さんッッ!!!」

この声は……剛毅…か。

目を開いた。

剛毅が自分を見下ろしている。

「………バカ…野郎、仮面、外すな、って言った、だろうが…」

金色の髪を風になびかせ。

秀麗な顔を涙で歪め。

剛毅は……北条悟史は……俺を見ていた。

「く……黒杉さん!!」

「なんてェ面してんだ…みっともねえな……」

「しゃ……喋らないで!!すぐ、すぐ黒時さんを――」

「無駄だ………『鬼狩柳桜』で貫かれた、んだ…いくら、奴、でも……」



あぁ、眠い。とても、とても、ねむい。



「駄目だ……駄目だ黒杉さん!!! あなたはまだ、死んじゃいけない!!!!」

「………疲れたよ……俺ぁ………
 救おうとあがくことに。掬おうとあがくことに。………つかれた……ほんと………」

頬を何かが流れる。

それは、瞳から流れ出していた。

「……俺…仲間に、なれなかったのか………結構…気にいってたんだ、…『作戦』…忘れる、ぐらい、さ…」

「黒杉さん………」

「このまま死ぬの……か………それじゃああんまりにも俺が報われねぇし……俺が死ぬ意味を…遺しとくか…」

最後の力を振り絞り。

悟史に腕をからめるようにしがみつき。

「終結を………頼む…」

そのまま、床に、腕を広げ、倒れた。

意識の世界が、暗黒に染まる。

最期に、脳裏に移るは。



『彼女』の微笑み。



「あ……なぁんだ――」





そんなとこに。こんなばしょに。



まぼろしだろうが、にせものだろうが。



かまわない。





「そこに―――いるんだな……側に………いてくれ。羽入……」










































  ― 五年目の祟り ―







●鷹野三四事件


入江診療所ニ勤メル鷹野三四ガ古手梨花ノ命ヲ狙イ、

『東京』ト言ウ組織ノ『山狗』部隊ヲ率イテ雛見沢分校ニ突入。

幸イ怪我人ハ無カッタ。

山狗ハ全員逮捕サレタガ、主犯ノ鷹野三四ハソノ後、

刑務所ヘ護送中、何者カノ手ニカカリ、死亡。

死体ハ義理ノ弟『嵩野四五六』ニ引キ取ラレタ。















●黒杉悠貴・伐椙鏡雨事件


雛見沢分校ニ通ウ黒杉悠貴ガ古手梨花ノ命ヲ狙イ、

『黒』ナル部隊ヲ率イテイル事ヲ『嵩野四五六』ニ教エラレタ前原圭一達ガ事前ニ悠貴ト対峙シタ。

黒杉悠貴ハ人間デハナク、邪悪ナ能力デ前原圭一達を追イツメタガ、『鬼狩柳桜』ニ貫カレ、崖カラ落下。





死体ハ見ツカッテイナイ。





尚、『鷹野三四』ヲ殺害シタノハ黒杉悠貴モシクハ『黒』デアルトイウノガ最有力説。

…シカシ『黒』ハ一人トシテ捕マッテ居ナイノデ、真相ハ不明。

タダ一人関連ガアルト思ワレタ『熊谷勝也』モ失踪。

マタ富竹ジロウ(本名不明)モ綿流シ当日カラ姿ガ見エナイ。















●雛見沢連続怪死事件トノ関連

雛見沢連続怪死事件『オヤシロ様ノ祟リ』ニ当テハマル箇所モアルガ、

消エタ人数ガ多ク、全体的ニハ例年トハ少シ異ナル。

警察ハ、犯人デアル『黒』ト『黒杉悠貴』ノ行方ヲ捜スト共ニ、消エタ人物ノ消息モ探ッテイル。



















――――――――――――――――――――――――――――――――――――― Fin


    『お疲れ様会





inserted by FC2 system