Tips『救うために。』
「沙都子の叔父が帰ってきた!!?」
次の日、私と悠貴は学校に行って真っ先にみんなに説明した。
「……そうだ。」
「ちょ………悠ちゃん! どういう事ですかッ!?」
「詩音、落ち着いて!」
「これが落ち着いていられますかッ!状況はどうなんです!!悪いんですか!?」
「詩ぃちゃん! そんなに急いたら二人が話せないよ!!」
詩ぃは少しだけ落ち着いたようだ。
「状況は、最悪の一歩手前だな。北条の精神は、このまま放っておけば……崩壊する。」
「じゃあ何で放って来たんですかッ!!危険だって解ってたんでしょう!?ほっといてはいけないって解ってたんでしょう!!」
「……北条が拒否した。」
「沙都子が……!?」
「………沙都子は、自分が耐える事で悟史が帰ってくると信じているのです……」
「バカやろう……!! そんな事をしても悟史は帰ってこないだろうがッ…!」
圭一が怒りのあまり机を殴る。
「…………」
悠貴と眼があった。
悠貴も同じ事を考えていたらしい。
「この中で誰が、『沙都子を救うために。』と言って暴走するか。」
それを見極めようとしていた。
レナ、魅ぃはない。
圭一は、熱くなってはいるが、悪い方に進んではいない。
問題は…………詩ぃだ。
「良いですよ。……私が行ってアイツを*してきます。」
「詩ぃちゃんダメ!!」
「止めな! 詩音!!」
「うるさいうるさいッ!!! 口だけで何もしようとしない偽善者共が!!!
私は違う!! 私は沙都子を妹だと思ってる!! 家族を見捨てはしない!!!
あなたたちが動かないから私がやるんですよ!!!! たった2000秒でね!! 感謝して下さいよ!!」
やはり詩ぃは暴走してしまうようだ。
詩ぃがドアへと向かう。
そこに圭一が立ちふさがった。
………『前回』と同じ展開…
「……なんですか圭ちゃん。どいて下さい。」
「………悪いな詩音。ここはどかねぇよ。」
『前回』の『皆殺し』と同じように話が進む。
圭一は詩ぃを言いくるめようと必死だ。
圭一が話終えた。
後は詩ぃ次第だけど………きっと!
「………要するに、圭ちゃんは叔父の味方なんですね?」
「「「「!!!?」」」」
私すら驚愕に眼を見開く。
こんな事が!?
「な…何を言ってるんだ詩音!!」
「そういうことでしょう!? 邪魔をするなら死んでしまえッ!!!」
詩ぃが持っていた違法スタンガンで圭一に襲いかかる!
「詩音!?」
「詩ぃちゃん!?」
「ダメェェェェ!!!」
今……今圭一が死んだらっ!!!!
その詩ぃの手を、悠貴が止めた。
「………何ですか? 悠ちゃんも死にたいんですか?」
「……………」
悠貴の眼が氷の様に冷たい。
「………圭一。」
「な、何だ?」
詩音に*されかけた上に、突然悠貴に呼び捨てで呼ばれ、圭一は戸惑っている。
「ここからは俺がやる。お前は策を練ってくれ。」
「……あぁ、わかった!」
「だからッ! 私が*すって……、」
「…黙れ。」
悠貴が初めて詩ぃに言葉を放った。
「……は? 今…黙れって……」
「さっきから黙って聞いていれば、グダグダグダグダと……
『家族を見捨てはしない』の辺りで少し見直したのは間違いだったな。」
「な……な……」
詩ぃは爆発寸前だ。
だが、詩ぃよりも、悠貴の方が………格段に怖い。
「何が不満なんですかッ!! *せば良いじゃないですか*せばッ!!」
「……うるせぇっつってんのが解んねぇのか!! このクソ餓鬼!!!」
悠貴が詩ぃも魅ぃも、圭一も、レナでさえも、
見えていない羽入すら震えるような声で憤怒した。
「鬱陶しい…。*す*すと、何度も……」
「な…! じゃあ悠ちゃんはどうなんです!! 何か策があるんですかッ!!!」
「それを考えようとしてんだろうがッ!!! 人の話聞いてねぇのかテメェは!!!!」
悠貴が再び怒鳴る。
「あぅあぅあぅあぅあぅ…! 悠貴が恐いのです………」
「確かに……ちょっと恐いわね…」
私と羽入だけではない。
詩ぃを除くみんな、悠貴の恫喝に恐怖した。
「………そこまで言うならやってみろ。」
「……?」
詩ぃが怪訝な顔をする。
「*せるんだろ? *すんだろ? だったら*ってみろよ。………俺を。」
「「悠貴ッ!?」」
「悠貴君!?」
「悠ちゃん!?」
「……悠ちゃん、自分が何言ってるか……解ってんですか?」
「当然だろ? 安心しな。テメェは人殺しにはならねぇ。死ぬとしたらテメェだ。
女だからって容赦はなしだ。顔に傷はつけないがな。それぐらいの礼儀はある。徹頭徹尾完膚なきまでに手抜かりなく…………」
そこで一旦悠貴は言葉を切り、
体を前に折り曲げ、真っ赤な舌を突き出した。
「…ぶっ潰してやるよ。」
「……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
遂に詩ぃがキレた。
叫び声と共に、悠貴にスタンガンで襲いかかる!!
けれど悠貴は、詩ぃの右腕を左手で軽く払い、
右手で詩ぃの後頭部を掴み、自分の方に引き寄せ、膝蹴りをいれた。
「あ…………ぐ……!!」
「………」
無言のまま右手で掴んだ詩ぃの後頭部を離し、左手で詩ぃの首を掴み持ち上げる!!
「あ…か……ぐぅっ………」
ジタバタと足を動かすが、届くはずがない。
「悠ちゃん止めて!! 詩音が……詩音が…!!!」
<悠貴視点>
「………」
「悠貴……」
古手が心配そうにこちらを見ている。
掴んでいた手を緩めた。
園崎妹が地面に落ちる。
「けほ………けほ……かは……」
「……『死』とはそういうことだ。………もしも前原の策が失敗したら。……俺が、北条鉄平を*す。
俺の方が迅速かつ確実に消せるし『鬼隠し』という形で消える事ができる。それならどうだ?」
「悠貴ッ!! 無茶な事を言わないでッ!!」
「悠ちゃんまで! 何言ってるの!!」
「悠貴君ダメだよ!!」
恨めしそうにこちらを睨んでいた園崎妹だが、
その眼が穏やかなものになった。
「……わかりました。……そっちが最善ですね。でも、もし作戦の途中で沙都子が危ないと感じたら………」
「……あぁ。わかっている。」
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第5話 『結摘・善(決着・前)』へ
