ひぐらしのなく頃に
『痛々し編』
― 部活(不勝) ―
古手との対談から一夜明けた今日。
いつもと同じ様に時が過ぎ、放課後になった。
…………帰ろうか。
そう思っていると、声をかけられた。
「……あの…」
「?」
振り返る。
栗色の髪の子だ。
………名前は覚えていない。
「今日、この後…暇かな、かな?」
「………まぁ。」
「悠貴、良かったら部活に参加して欲しいのですよ。」
古手が言ってきた。
「部活……?」
よく分からんが誘ってくれている様だ。
「そう!」
今度は緑髪の子か。確か…委員長、だったか?
同じく名前は不明。
「まずは部員の諸君に是非を問う! 転入生、黒杉悠貴を我が部に入部させるかどうかッ!!」
「レナは異議なし!」
「俺も異議は無いぜ!」
「構いませんわ〜!!」
「…ボクも賛成しますですよ。」
委員長の問いかけに、全員が賛成を示した。
「全員一致!! おめでとう黒杉悠貴くん。君に栄えある我が部への入部試験を許可する!」
満面の笑みで、委員長が言う。
………恐ろしいスピードで話が進むな。
「…順を追って説明してくれないか? …第一に……何の部活だ?」
待ってましたと言うかの様に、全員が口々に言う。
「我が部はだな、複雑化する社会に対応するため、活動毎に提案されるさまざまな条件下、
…時には順境。あるいは逆境からいかにして…!!」
「同じ男だからって、手加減はなしだ! 身包み剥いでやるから、覚悟しとけよ!!」
「…レナは弱いから…いじめないでほしいな。なかよくやろうね。」
「をーっほっほっほ!! 黒杉さんに私の相手がつとまりますかしら〜!?」
「…つまり、みんなでゲームをして遊ぶ部活なのですよ。」
「……………」
的を得た回答は古手のものだけだった。
「…………わかった。…参加しよう。」
その後、委員長(園崎魅音というらしい)が会則を説明した。
「……つまり、仲間だからとはいえ、手加減は無し…と?」
「そういうこと! 良いねぇ、悠ちゃん!! 物分かりが早くておじさん助かるよ!」
「魅音さん、前置きはそれぐらいにして、今日は何をするんですのー?」
「今日はねぇ……悠ちゃんもいるから、ジジ抜きにしよう。ルールは分かるよね?」
「………あぁ…」
頷いた瞬間、全員に哀れみの眼で見られた。
……何故だ?
ゲームが始まり、三周して気がついた。
全員カードを引くときエラく真剣だな。
そんな真剣に見ても………わかるはずが………ッ!?
「………傷で見分けているのか?」
「会則第二条! あらゆる努力が義務付けられている!!」
前原の言葉に全員が頷く。
その視線は常にカードに向けられたままだ。
…………本気か。
初めての人間にこの仕打ちとは……やってくれる。
……これはただのジジ抜きではない。
カードの特徴を記憶し、相手の出方を伺う。
すべての情報を武器とし、誰よりも先にあがる。
……いきなり初心者に不利なゲーム。
それを選ぶ園崎はえげつないが、
誰一人として反論しないことも、またえげつない。
手札を机の上に置き、瞳を閉じる。
黒一色の闇の中。
深く、深く、深呼吸をする。
会則第一条、狙うのは一位のみ……か。
まさにその通りだな。
俺の一位を防ぐために……
俺以外が経験しているゲームを選んだ訳か……
ゆっくりと、瞳を開ける。
……全員真剣なのに、俺だけ真剣にならない訳にもいかないだろう。
心の中で呟いた言葉がきっかけとなる。
………さあ、『終わらせ』よう。
こうして、入部試験が始まった。
【第一戦】
「くっくっく、悠ちゃんの手札を当てるよ。右からJ、6、8、Q、2、9、4。」
「………」
「ちなみにジジはクラブの9なんだよ、だよ。」
「………」
……ここまで不利とは。
やはり情報は重要か。
………何においても。
「それじゃあ私がこれを引いてあがりですわね、……!!! く、黒杉さんっ!?」
「…………これを引いて『俺が』あがりだ。」
「く、悔しいですわ〜!!!」
【第二戦】
「おじさんあ〜がりッ!!」
「レナもあがりだよ!!」
「………あがりだ。」
「…ボクもあがりなのです。」
「あがりですわ〜!!」
「がぁッ〜!! アソコで間違えなければ……ッ!!」
【第三戦】
大体は掴んできた。
「……あがり。」
「おっ!! 悠ちゃん初の一位だね!!」
「はぅ〜。早いんだよ、だよ。」
「……さすがなのです。」
「それにひきかえ圭一さんは……」
「また負けたぁぁぁぁッ!!!」
【最終戦】
「最後こそ…!」
前原が意気込んでいるが……
「………あがりだ。」
「がぁぁぁぁぁッ!!!」
「かわいそかわいそです。にぱ〜☆」
「結局圭ちゃんが最下位で、悠ちゃんは二回も一位になったね……」
「圭一さんは悠貴さんに比べて不甲斐ないですわ〜!」
「さ、沙都子ちゃん、そんなこと言っちゃ可哀想だよ。圭一君はただ力が空回りしただけで……」
「………竜宮の発言もなかなかひどいと思うが?」
「さて、悠ちゃんの入部だけど……」
一気に場がシンとなる。
「部長、園崎魅音の名において、許可する!! おめでとう黒杉悠貴くん!! 君は晴れて私たちの仲間だ!!」
「……『仲間』………か…」
「? どうしたのかな、かな?」
「………いや、何でもない。よろしく。」
こうして、俺の入部は決定した。
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